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札幌高等裁判所 昭和26年(う)73号 判決 1951年6月05日

控訴人 被告人 大石耕一郎

弁護人 安斎保

検察官 佐藤哲雄関与

主文

原判決中被告人有罪の部分を破棄する。

被告人を罰金十五万円に処する。

右罰金を完納することができないときは金一千円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

訴訟費用は全部被告人の負担とする。

理由

弁護人安斎保の控訴の趣意は別紙記載のとおりであつて、これに対する当裁判所の判断は左のとおりである。

第一点について。

労働基準法第百二十条第一号第二十四条違反の罪は賃金を支払うべき期日毎に且つ支払を受くべき労働者一人毎にそれぞれ一個の犯罪を構成するものと解すべきことは、同法第二十四条が賃金は毎月一回以上一定の期日を定めて、その全額を通貨で直接労働者に支払うべきことを命ずることにより、労働者一人一人に対する賃金の支払を確実ならしめている法の精神から自明のことゝいわなければならない。されば、これと同趣旨に出た原判決の法令の適用は正当であつて擬律錯誤の違法はない。所論はこれと異る見解に立つもので採用し難い。

第二点について。

本件労働基準法違反の所為は昭和二十三年九月から昭和二十四年三月までの所為であることは記録上明かであるが、原審の取調べた証拠によると、いわゆる経済九原則による融資の停止は昭和二十四年四月一日からであることが認められるから右融資が停止された結果本件賃金の不払を累ねるの止むなきに至つたものというわけにはゆかず、その他本件記録を精査しても、行為の当時普通一般人を標準として合法行為への期待可能性がないと認められるような事情はこれを認めることができない。それ故原判決には所論の違法はなく論旨は理由がない。

第三点について。

本件記録及び原裁判所において取り調べた証拠に現われている事実に徴すると、原判決の刑の量定は不当であると認められるので、刑事訴訟法第三百九十七条第三百八十一条により原判決中被告人有罪の部分を破棄し、同法第四百条但し書により更に判決するに、罪となるべき事実竝にこれを認めた証拠の標目は原判決の摘示と同一であるからこれを引用する。

右の事実を法律に照らすと、被告人の判示各所為は労働基準法第百二十条第一号第二十四条罰金等臨時措置法第四条第一項に該当するが昭和二十四年一月三十一日以前の各所為(原判示第一の(一)乃至(五)、第二の(一)乃至(四))は罰金等臨時措置法による刑の変更以前の所為であるから刑法第六条第十条の趣旨に則り軽い変更前の寡額によることとし、以上は刑法第四十五条前段の併合罪を構成するから、同法第四十八条第二項により各罪につき定められた罰金の合算額の範囲内において被告人を罰金十五万円に処し、右罰金を完納することができないときは刑法第十八条にしたがい金一千円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置すべく訴訟費用は刑事訴訟法第百八十一条第一項を適用して被告人にその全部を負担させることゝする。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判長判事 竹村義徹 判事 西田賢次郎 判事 臼居直道)

弁護人安斎保の控訴趣意

第一点原判決には判決に影響を及ぼすべき擬律錯誤の違法がある。

原判決は被告人に対し職員藤田四郎外十一名及び山本慧外多数砿員に対する昭和二十三年九月より昭和二十四年三月に至る毎月一回の支払期日に於ける賃金不払の事実を認め之に対し「労働基準法第二十四条第二項の規定は労働者個人の賃金を確保することを目的としているものであるからこれに違反すれば労働者個人個人について毎月成立するものと解すべき」であると為し、労働者の総数と各賃金支払期日の総数との相乗数に相応した犯罪の成立を認めた上刑法第四十五条前段第四十八条を適用し労働基準法第百二十条第一号所定の罰金刑(五千円以下の罰金刑)の合算額の範囲内において被告人を罰金三十万円に処したのである。

しかし乍ら原審の右見解は罪数論に関する明白なる誤謬に基因せる不当なる法律解釈である。由来刑法学上犯罪が一個なりや数個なりや、また行為が一個なりや数個なりやは自然的物理的意義における行為の単複によつて決すべきではない。刑法的意義に於ては数個の自然的物理的行為を包括して一個の行為(法律的意義に於ける行為概念)と見る場合もある。また一個の行為あれば一罪ありというのは原則である。しかし二個又は二個以上の行為(法律的意義に於ける行為)が相合して一個の犯罪を組成する場合もある。例へば公務員に対し財物の交付を約束し、次で右約束に基いて財物を現実に交付した場合の如き、-またフランクの引用した例であるが-楽屋裏に設けられたる多数女優の衣裳戸棚より順次各女優の衣裳を窃取したる場合の如き、一個の殺意の下に犯行の場所を異にし数回に亘り或は毒物を投与し或は兇器を振つて遂に殺害の目的を遂げたる場合の如き(所謂日大生殺し事件の大審院判例参照)は前者の例であつてこれ等の場合は孰れも刑法的意義に於ける行為並に犯罪の個数は各々一個である。(現実の個々の物理的自然的行為は一個の行為を組成する部分行為かまたは之等は刑法的には一個の行為概念に包括されるのである)また、所謂二行為犯乃至複行為犯は後者の例であつて、ドイツ刑法に於ける文書偽造罪(偽造行為と行使の二行為が相合して一個の犯罪とされて居る)わが刑法に於ける墳墓発堀棺内物領得罪は典型的二行為犯、わが文書偽造罪は不整型二行為犯である。然し行為が一個なるに拘らずそれが数罪とされることはあり得ない。偖て本件問題の労働基準法第二十四条第二項違反罪(賃金不払罪)を観ると同罪が労働者の賃金を確保することを目的として制定せられたことは論がない。しかし、罪数の問題は原判決の如く単に被害法益の数のみによつて決定すべき問題ではないのであつて、更に行為の方面より観察する必要がある。即ち同罪は所謂真正不作為犯であつて、その構成要件は一方に於て「毎月一回以上一定の期日を定めて賃金を支払へ」という作為義務が規定せられ、この作為義務に違反した賃金不払という不作為(行為)の存在を必要とするのである。而してこの賃金不払が具体的には、多数の労働者に対し、数回に亘つて行われたとしても、これらは法律的観察の下に於ては総て、同条の規定した一個の抽象的作為義務違反に包括せられ「毎月一回以上一定の期日を定めて賃金を支払わなかつた」という構成要件が一回充足せられたものと解すべきではなかろうか。果して然らば、本件犯罪は包括して一個の前示違反罪を構成するに過ぎぬと解すべきであろう。また仮りに原判決の認定の如く賃金支払に関する義務違反が複数であるとしても、之を行為の方面から観察して少くとも各支払日に於ける被告人の行為-則ち意思に基く不活動(不作為)-は一個であるから、各支払日に於ける賃金不払の所為は刑法第五十四条第一項前段により一個の犯罪即ち観念上の併合罪を構成するものと解すべきである。従つて本件犯罪は結局支払日の数たる十四個の実体的併合罪を構成するに過ぎないものであり、その罰金刑の多額は各罪につき定められた多額(五千円)の十四倍に相当する額と謂はねばならぬ。

論者或はかかる解釈を以て徒らに事業主の責任を軽うし、労働者の利益保護を危うするものであると論ずるかもしれない。しかしかゝる非難は元来労働者の生活権に最も重大なる関係をもつ賃金不払罪が他の軽微なる違反行為と共に労働基準法第百二十条の罰則下に軽微なる罰金刑を以て一括規定したことに職田するものであつて、その解決は寧ろ立法手段に俟つべきものであると考える。然らは原判決が上叙の如く労働者の総数と各賃金支払期日の総数との相乗数に応した犯罪の成立を認め該数を基礎として各罪につき規定せられた罰金の合算額の範囲内に於て被告人を処断したのは、正に判決に影響を及ぼすべき擬律錯誤の違法が存するものであり、到底破棄を免れない。

第二点原判決には判決に影響を及ぼすべき事実の誤認ありと疑ふべき顕著な事由がある。本件違反は孰れも期待可能性なき行為であつて犯罪成立の要件たる有責性を欠くものと謂ふべきである。即ち被告人が主宰せる北海鉱山株式会社は資本金三百万円に過ぎず炭礦の開発を目的とする会社としては余りにも小規模の会社である本件違反発生当時に於ける同会社の資産状態は復興金融金庫の融資による設備――これは謂ふまでもなく被告人の整理処分し得ない資産である――の外他に見るべき資産なく一方当時の会社収入は復金指導監督下に於ける炭礦の長期開発計画の中途にあつたが故に元来が出炭量少い山が被告人等の厳重なる督促に拘らず出炭殆どなく採炭による収入は殆ど零であつた。従つて一切の支払は復金による融資による以外に方法はなかつたのである。然かも他に私財を投じて会社を援助する株主役員等なく、被告人は右窮状を復金当局に訴へ更らに融資方を依頼し漸く大凡一億円を見通しとする大口融資の了解を得たのである。然るに不幸その実現に手間取つて居る間に突如総司令部より所謂経済九原則等の為め復金の一切の貸出を禁ぜられ、上叙融資も不能に陥り遂に本件賃金不払を累ぬるの止むなきに至つたのである。かゝる意外の障礙は独り被告人の会社のみならず全国の炭礦亦然り、而して被告人はこの間同会社の主宰者として自己の努力により右違反を防止せんとして百方融資に奔走したことは勿論である。しかしその所要資金の尨大なると当時の労働攻勢におそれてか資本家等は出資を肯せず漸く播磨嘉蔵より二百万円を借受け内百万円をまた自己の個人保証の下に北海道拓殖銀行より百五十万円を借受け合計二百五十万円を送金賃金支払等に充当せしめたのである。これは当時被告人個人が違反防止の為め為し得た能力の限度であつて被告人は徒らに賃金支払を怠つた訳ではない否最善の努力を尽したるに拘らず遂に支払不能の状態に陥つたのである。由来株式会社の本質上何人も株式の限度を超えて出資の義務はないのであるが被告人は事業主としての責任を痛感し敢て私財を投じて違反防止の為め出来得る限りの努力を為したものである。かゝる会社資産の状況の下に於ては特殊の者を除き普通一般人を標準とし何人が被告人の地位に代ると雖も同様の結果に陥らざるを得ないのであつて、畢竟本件犯罪(不作為犯)に於ける作為義務の実行――即ち構成要件的結果発生の防止は事実上不可能であり、所謂期待可能性なきものと謂はねばならぬ。右事実は原審証人湊守篤、播磨嘉蔵、味戸新之助等の供述、被告人に対する検察官の第一回供述調書の記載その他一件記録に徴し極めて明白である。果して然らば原判決は須らく被告人に対し無罪の判決を為すべきに拘らず事茲に出でざりしは重大なる事実の誤認を疑ふべき顕著なる事由あるものと謂はねばならない。

第三点原判決には刑の量定著しく失当と思料すべき顕著なる事由が存する。原判決は原判示事実を認定の上、被告人を罰金三十万円に処する旨の言渡を為した。

しかし右判決は左記により刑の量定著しく失当と思料すべき顕著なる事由あるものと考へる。(1) 被告人が代表取締役たる北海鉱山株式会社は設立後未だ日浅く資本金も第一回の増資後に於てすら金三百万円の少資本に過ぎず、またその鉱業権(上尾幌炭砿)も元と、中島裕吉外一名が共同所有して居たが之れが開発の方途なく、徒らに国家重要の資源は地下に眠つて居たが被告人は敗戦下の日本がその最も必要とする資源を空しく放置することを国家的重大損失と考へ、敢て従来炭礦経営の経験なきに拘らず、挺身前記会社の社長として私財を投じてこの国家的事業に乗り出したのである。勿論炭礦開発の如きは長期に亘る国家的事業であるから、個人的利益の追及などを毛頭顧慮して居なかつたのである。その目的はたゞたゞ国家資源の開発により敗戦日本の経済的復興のみを冀つたに過ぎぬ。被告人は当時製材用鋸(その製品はダイヤモンド印鋸として天龍、丸源両会社とともに日本に於ける三大メーカーとして全面的に広汎なる販路を有して居る)の製造を目的とする関東製鋸株式会社及びその販売会社たる大耕産業株式会社の社長としてこれ等の事業により得た利益の凡んど全部を同炭礦の開発に投し、その熱意は当時の復興金融金庫当局を動かし、被告人が経営するならばといふことで今日迄中小炭砿としては稀に見る数千万円にのぼる融資を受けたのである。而してこの融資については被告人は同時に個人保証を為して居るのであるから、同炭砿の成功不成功は全く被告人の死活に関する重大事である。この一事を以てしても被告人に経営上の不誠意ありと云ふが如きは全くのデマであることが判るであらう。被告人としては唯その全能力に於て出来得る限りのベストを尽し全霊を打ち込んだのであるが、前点述べたが如き意外の障礙により事業の蹉趺を来たし今や破産の一歩手前に追つめられて居るのである。(2) 北海鉱山株式会社の経営する唯一の炭砿は上尾幌炭砿である。同炭砿は元と王子製紙株式会社経営の大東炭砿であつて、業者間にはその開発は所謂「六ケ敷い山」といはれて居た山である。しかし同炭砿は原審証人湊守篤(当時の復金融資部長)の証言により明かなる如く、復金の計画せる長期の開発計画完成の曉は十分成算ある炭砿であり、かかる希望の下に被告人は復金の尨大なる融資を期待し開発事業に邁進したのである。而して本件違反発生当時は、謂ふまでもなく右長期計画遂行の途上であつてその出炭量は――長期計画完成前であるから元来が微々たるものであつたが殊に本件給料不払発生当時には――社長たる被告人並に原審証人味戸新之助(当時の上尾幌工業所長)の督励に拘らず、出炭殆どなく、同会社の収入は零であつた。一切の支払は唯復金の融資により行ふより他はなかつた。一方会社資産は復金の監督の下に建設せられた設備あるのみで――之を処分することは不能である――他に見るべきものなくまた他に私財を投じて会社を救済せんとする株主役員の如きものは一人も居ない。依つて被告人は復金当局に窮状を訴へ更らに融資方を依頼し、復金当局亦之を諒として大凡一億円を見通しとする大口融資の了解を得たのである。(原判決は前示湊証人尋問の結果かゝる事実を認め得ないと判示して居るが、被告人は右了解を得たに相違なき旨断言して居る)即ち被告人はこの大口融資によつて窮境を打開し開発事業の完成に邁進せんとしたが、不幸その実現に手間取つて居る間に突如総司令部よりの所謂経済九原則等のため融資不能に陥り延て本件賃金不払を累ねるの止むなきに至つたのである。前記復金湊証人は原審に於ける尋問に際し、独り被告人の山のみならず、恐らくこの総司令部の命令により全面の中小炭砿は長期の計画を中途にして一時に挫折せられ、その処置に窮したことであろうと泌々語つたことは受命判事の記憶に新らたなところであらうと思ふ。(3) 一方被告人は個人としてこの窮状を打開すべくその全力を尽したのである。即ち被告人は八方金融の途を構じたが、何分にも尨大なる資金と当時の労働攻勢におそれてか敢て出資するものがなかつたが漸く二口計二百五十万円の融資を得たのであつた。即ち原審証人播磨嘉蔵の証言により明らかなる如く被告人は更らに有力なる資本家が同炭砿の開発に当るなら、自ら敢て社長たるの地位を占むべきではないと考へ、当時同証人が有力なる資本家にして炭砿経営の熱意あるものと信じ、同人が経営主となることを条件として二百万円の金融を受け内金百万円を上尾幌工業所に送金したのみならず、被告人個人保証の下に北海道拓殖銀行より百五十万円を借り受け賃金支払に充当したのであつた。これは当時の被告人として為し得た最大の成果であつた。因みに右二口の金融については被告人個人が債権者等より訴訟を受け私財を投じて漸く和解したが、之によつて蒙つた被告人の犠牲は実に莫大なものである。原審判決がその程度のことは当然であると半顧の価値なき如く断定せられたのは、被告人として誠に情ないことである。(4) 被告人は代表取締役として徒らに賃金支払を怠つたという訳ではない否ベストを尽したに拘らず遂に支払不能の状況に陥つたのである。当時の会社の資産状態は前叙の如く復金の融資による設備を除いては、殆んど零であり、復金融資を除いては他に資金その他の支払を為すべき財源がなかつたのである。この事は同会社が久田重蔵外一名から炭砿労務者住宅の建築代金等の不払によつて訴訟を提起せられ何百万円かに上る債務支払の確定判決を受けた事実によつても明らかである。(5) 一方上叙の如く、同会社の資本家側は株主役員共に被告人を除いては誰一人自ら出資してこの窮状を救はんとするものなく被告人が止むなく孤軍奮闘してその打開に尽したこと。(6) 被告人には勿論前科はなく刑事上の取調を受くるが如きは今回が始めてゞあること。被告人は前記北海鉱山株式会社の外関東製鋸株式会社、大耕産業株式会社の社長である外東京商工会議員等をも兼ねる多年事業界に貢献した有為の実業家である。その家庭生活も極めて質素そのものであり、他の一部不良資本家の如く労働者を搾取苦るしめて自己が栄耀を極むるといふが如きことは絶対にして居ないことを断言する。(7) 賃金遅配現象は、独り被告人の会社のみに於ける出来事ではない。今日の如き金融逼迫の折柄全国殆んど凡ての会社、事業家にしてこれなきはなしと断言するを憚らない。かゝる事実は裁判所に顕著なる事実として敢て証明を要しないところである。然り給料の遅配の如きは、いやしくも善良なる事業家として法の制裁を俟つまでもなく、之を欲するものではない。たゞその原因たる極度の経済的逼迫の除去せられざる限り、その欲すると否とに拘らず、これに追やられて了ふのである。刑罰の一般的威嚇力を以て之を防止し得ると考ふるが如きは、抑々誤りである。若しそれ原判決の如く被告人を是が非でも厳罰に処さねばならぬとするならば、何が故にそれ以上の遅配ある他の事業主を起訴処罰せないかを疑ふものである。(8) 被告人は上来縷説の如く本件炭砿経営につき莫大なる財産上の損失を受けて居るのみで、何等の私利を図つて居ない。(9) 被告人が主宰する前記北海鉱山株式会社は前叙の如く復金融資の突如中絶により一時為すところを知らなかつたが、その後経営上についても種々工夫をこらし且つ石炭販売に関する統制の解除と共に炭価の上騰販路拡大等好条件に恵まれ現在に於ては賃金不払問題は全て解決し、自給自足程度の状況に達して居る。しかし復金への利子の支払砿山設備の改善労務者の厚生事業等に多大の資金を要し、被告人の私財を投ずべき必要に依然迫られて居る。この意味に於ても三十万円といふが如き過大の罰金刑は被告人は勿論延てはその主宰する前記炭砿にとつて余りに大なる負担と謂はねばならない。

以上その他の本件記録に現はれた諸般の事情を彼此参酌して是非被告人に対し更らに軽き罰金刑を以て臨まれむことを切望する次第である。

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